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最初はただの契約だった。
女子に人気があることは、自分にとってプラスだろうと考えていた。
それでも最近では自分の周りできゃーきゃーと騒ぐ彼女たちに、そして私を巻き込んでの諍いにうっとうしくなっていたのは事実だった。
だから私は雇ったのだ。
私の恋人の役をしてくれる女子を。
彼女、秋原伊織がその役を受けてくれたのは、もう半年も前のことだ。
秋原伊織は五年のくノたまで、どちらかというと大人しく静かな女子だった。
よく図書室で本を読んだり、保健委員の管轄である薬草畑に水をやったり、生物委員の飼っている生き物と戯れる姿を見たことがあったくらいで、それ以外の正面切った接触はないに等しかった。
それでも秋原伊織を彼女役に選んだ理由は、第一に大人しい子だったからという事に尽きない。
くノたま、特に上級生のくノたまには珍しいくらいの大人しさ。
そんな彼女を恋人にすれば、少なくとも私の好みは大人しい子、という意味をつけられる。
それに、大人しい彼女ならば私と偽物の恋人となったとしても、それに本気になることなどないだろうと思った。
ちゃんと最初に説明をすれば、もし私を好きになったとしても、自分で自制してくれるだろうと思った。
そんな酷いことを私は思ったのだ。
ようは、別れる時に後腐れない相手を選んだという事。
それなのに私は。
彼女の穏やかな笑みに、時折見せるはにかむような表情に、小さな失敗をして恥ずかしそうにしている顔に、照れた時に頬をかく仕草に。
いつの間にかやられてしまっていた。
参ってしまっていた。
捕えられてしまっていたのだ。
参った。
私の方がこんな気持ちになるなんて。
気付いた恋心は、もう止まることを知らずに、ただ走りだしていた。
続
三郎ー三郎ー酷いやーつー
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