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私と三郎は曰く幼馴染だ。
小さい頃から同じ村で育ち、周りに同じくらいの年の子は私達しかいなかったから、必然と一緒に行動するようになり、段々と仲良くなっていった。
兄妹のように、親友のように。
それも、私の父から告げられた言葉で脆くも崩れ去ろうとしていた。
「・・・父様、先ほどの言葉はよく聞こえませんでした。もう一度おっしゃっていただけますか?」
「そう睨むでないよ、伊織。年頃の女子だというのに、もう少し慎みを持ちなさい」
「・・・・・・父様?」
「わかったわかった。もう一度だけ言うよ。よくお聞き」
父様曰く、家は代々秘密裏に続いている忍者の家系であること。
だと言っても、副業としていた染物が功を奏して、今では副業の方が基盤となってしまって早五代。
だからといって忍者もそこそこには依頼が来る。
こちらの都合では辞められない、と言ったことになっていると。
「だから、来春から忍術学園に行って忍術を学んできなさい」
「父様、話しが繋がっておりません。面倒臭がらずにきちんと順序立ててお話し下さい」
「順序立てて言おうがそうでなかろうが、最終的に言う事は決まっているのだからどちらでも同じだろう?」
「・・・はぁ、そうですね」
我が父ながらとことん面倒臭がりで困ったものだ。
かく言う私もその口だが。
こうして私の忍術学園入学は本人の預かり知らぬところで話は進んでおり、反対したところで意見が通るものでもなくなっていた。
「というわけで、私、くノたまになります」
来春から一緒にいられなくなることを三郎に告げると、三郎はお得意の「なんで」を連発し出したものだから、私は事細かに事情を説明・・・するはずもなく、上記の台詞を述べたわけです。
そしたら三郎は衝撃を受けたかのような顔で固まり、俯いて肩をぷるぷる振るわせたかと思うと、がばっと頭を上げて笑顔でこうのたまった。
「じゃあ私も忍たまになる!」
「・・・え?三郎?話聞いてた?」
「聞いてた!私も忍者になる!」
「・・・・・そう」
三郎は言い出したらこっちの話などお構いなしな性格だった。
しかも楽しいこと、面白いことが三度の飯より大好きなのだ。
忍者なんてそれこそ天職なのではなかろうか。
面倒臭いことになったものだと思いながらも、私は嬉しさを隠しきれずに口元を緩めたのだった。
続
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