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忍術学園に入学する時も一苦労だった。
なにせ三郎がまたもやお得意の「なんで」を連発してくれたのだから。
何度言っても納得してくれない。
駄々をこねて思い通りになっていた今までとは違うのだから、ちゃんと聞き分けてほしいものだ。
「だからね、三郎。私は女の子だから三郎と一緒には学べないのよ」
「なんで!」
「だーかーらー」
「な ん で!!なんで伊織は違うとこに行くの!?私は伊織と一緒にいたいからここに来たのに!!」
涙を浮かべながら喚き散らす三郎に、嬉しさ半分不安半分だ。
私と一緒にいたいと言ってくれるのはすごく嬉しいのだが、これからの三郎の将来が不安だ。
私もいつまでも一緒になどいられないのだから、この機会に三郎も友達を作れればいいのだけれど、と思っていた矢先にこれだ。
可愛いし、嬉しいしで私も三郎と一緒にいたいのは山々なのだから、そんなに泣きそうにならないでほしい。
なにも永遠に別れるわけじゃあるまいし。
「三郎、遊びに行くから」
「私も遊びに行く!」
「いや、それは止めた方が・・・」
「伊織は私が遊びに行くの、迷惑なのか?」
「そうじゃなくって!くノたま長屋の方は罠が沢山仕掛けられてるって先生が言っていたから」
三郎が怪我をするのは見たくない。
そんなので遊びに来られても、私は嬉しくもなんともない。
むしろ悲しい。
そう言えば三郎は渋々だったけれど引きさがってくれた。
「そうだよな。よく考えれば同じ敷地内にはいるのだもの。すぐに会えるよな!」
「そうだよ。私も遊びに行くし、三郎も他に友達作りなよ」
そう言ったらまた泣きそうになっていたけれど、それでも三郎はうんと小さく頷いた。
そんなことがあった入学式から、もう二月も経ってしまった。
時の流れは速いものだなー、なんて現実逃避。
だってこの二月、三郎のもとを訪れたことなど一度もなかったから。
三郎怒っているかな?
それとも不安がっているかな?
泣いていないだろうか。
ちゃんと友達は出来たのだろうか。
ご飯は残さず食べているのか。
好き嫌いは少しは直っただろうか。
そんなことを思いながら、本当に久しぶりに三郎に会おうと私は忍たま長屋へ歩いて行ったのだが。
・・・三郎?
三郎の雰囲気をまとった、別人がそこにいた。
表札をもう一度見る。
『鉢屋三郎 不破雷蔵』
確かに三郎の長屋の部屋だ。
でもそこには三郎の姿はなく、あるのは三郎の雰囲気をまとっている別の男の子。
きっとこの子が不破雷蔵君だ。
だけれど。
「三郎?」
どうしても私にはこの子が三郎以外には見えなかった。
続
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