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届きましたよ

「まったく、いい加減にしなよ三郎!お前はいつもいつも、悪戯するにも程があるぞ!」
「分かった分かった分かりました!そんなに怒るなよ雷蔵。眉間に皺が寄り過ぎて取れなくなってしまうぞ?」

ほらこーんな風に、と言って三郎は自分の眉間に指で皺を寄せて見せた。
その顔が今の雷蔵にそっくりで、怒っていたはずの雷蔵まで笑い出してしまうほど滑稽な格好をしていて。
みんなで笑い合って、畳の上を転げ回った。


嘘臭くない、本当の笑顔。
三郎があの日から笑えていないことなんて、俺たちは他の誰よりもわかっていた。
気づいていた、気づかずにはいられなかった。

同じ部屋の雷蔵は三郎が静かに流す涙を見ないふりをし、朝が早い兵助は顔を洗う三郎の目元が赤いことなど知らぬふり、いつもどこかみんなを見守るように一歩後ろから見ている勘右衛門は三郎の隣を譲らずに、俺はいつもよりも大きな声で騒ぎ立てた。
みんな心配していた。
三郎がこのまま、どこかへ行ってしまうのではと懸念していた。
伊織が三郎を連れて行ってしまうのではないかと、みんな気が気じゃなかった。

だから、あの日のことなどなかったかのように笑う三郎に、みんなほっとしたんだ。
三郎は、なんだかんだいってあの日を乗り越えたのだろう。
そう、みんな思ってる。
俺もそう思ってるだろうと、きっと三郎も思ってるだろう。


三郎はあれから少しずつだけれど、笑うようになった。
俺も、もう伊織の声を聞くことはない。
三郎の後ろをついて回った可愛らしい三郎の妹は、もう本当にこの世にはいなくなってしまった。

助けてくれと言われたとき、正直そんなことと思っていた。
三郎を助けることに、俺は協力できなかった。
たとえ親友だとしても、伊織を間接的にだろうと死なせた三郎に、俺は何かをしてやろうとは思えなかった。
だけど、伊織と出会わせてくれた三郎に、俺はどうしようもないほどの感謝を感じていたから、あの夜伊織の元へ向かったんだ。




三郎を助けてくれと、必死そうな声で俺に懇願する伊織。
三郎より俺を頼ることなんて、今まで一度もなかったよな。
それがどれだけ嬉しかったか、お前にも誰にもわからない。
心が芯まで温まるように、一片の隙間も許さないくらい満たされた。

俺は伊織が好きだったから。



お前の最後の声はちゃんと届けたよ。
届けたかった奴に届けたよ。
だからお前は消えてしまったんだろう?

「笑って」の一言。
たったそれだけ。
でもそれで十分だったんだよな?
お前も三郎も。




<竹谷先輩!見てください!とぉっても綺麗な青い空!>

目の前の空は、いつか伊織が言っていた空にとてもよく似ていた。







・・・あれ?これ三郎夢?
むしろ竹谷夢??あれ???
 

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