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あの頃を覚えていますか

いつだったのか、もう覚えていないけれど。
遠い遠い昔のこと。
俺と君は約束をしたよな?
神に誓ったはずだったよな?

お互いが、お互いだけだと。
愛するのは、君しかいないのだと。

鉢屋三郎は電車の中でぼぅっとしていた。
まだ寝ている頭を廻るのは、今朝方見た夢物語。
よく見る夢。
この世に生を受けて、自我が芽生えたころから幾度となく見る夢。
それは自分の前世の記憶であった。

時は戦国時代。俺は忍者だった。
否、忍者のたまごであった。
忍者になるために勉強をする場所。
そこで沢山の仲間と一緒に、忍者になる訓練をしていた。
俺は五年生。ろ組だった。
不破雷蔵と竹谷八左エ門と久々知兵助と尾浜勘右衛門。
仲のいい級友達。頼もしい先輩方。可愛らしい後輩達。
そして、俺の愛しいくノたまの女の子。
みんなみんな覚えている。

『好きだよ、伊織』
『私も三郎が好きよ。・・・もし生まれ変わったとしても、またきっと三郎を好きになるわ』
『私も伊織以外を愛することなどない。・・・絶対だ』
『ふふ、絶対ね』

伊織と交わした言葉。
ずっと忘れない、生まれ変わってもお互いだけだと。
そう、誓ったのだ。

その言葉通り、俺は夢に出てくる君にまた恋をした。
狂おしいこの愛情。前世から変わりはしない。

それでも、君がいない。

小学校、中学校、高校と君をどれほど探しただろう。
休みの日は街を歩き回り、他校にも足を運び、毎日毎日暇さえあれば君を探して回った。
十二年。十二年だ。
おかげで小学校の時の全校生徒を覚えているし、中学も高校も同様だ。
高校なんてわざわざ生徒数の多い学校を選んで通った。
にもかかわらず、君は見つからない。

いろいろ考えた。
他県なのかもしれない。
この近辺にはいないに違いない。
もっと遠くまで足を運べば、きっと見つかるだろう、と。
でも反対に、君は見つからないかもしれないとも考える。
もしかしたら、生まれ変わっていないのかもしれない。
もしかしたら、自分よりも先に生まれたのかもしれない。
もしかしたら、もっと後に生まれるのかもしれない。
もしかしたら、もしかしたら。
考えるだけで億劫だった。

それでも俺は諦めきれない。

大学も大きな大学に入ったよ。
君を探すために大きな大学に入った。
生徒数も多いし、きっといろいろな情報も集まってくる。
ネットで調べられるだけは調べた。
人伝にいろいろ聞いたりもした。
俺の名前は前世のまま鉢屋三郎だったから、きっと君も、秋原伊織のままだろう?
きっと見つけ出すから。


三郎は目を瞑り、今向かっている大学に思いをはせる。



もう少し、待っていてほしい。








三郎現パロ。むしろ転生。
切ないの書きたくなってきた^^

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