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笑顔のあの子 04

お饅頭、柏餅、葛餅、葛きり、ずんだ餅、三色団子にみたらし団子。
桜餅の日もあったなぁ。

少しずつ少しずつ、餌付けをしていく日々。
そしたら、ほら。
二日か三日に一度は伊織とお茶をする。それが日常になった。

「(日々努力した甲斐があるというものだな)」

今朝会ったときにお茶の約束を取り付けて、今は伊織を探してる。
今日のお菓子はおせんべい。
甘い物ばかり食べさせてても飽きてしまうだろうからね。

くるりと目線を動かすと、ほらいた。

「伊織」
「あ!黒木先輩!」

ととととと、と足音をさせてこちらに走り寄ってくる。
ほら、またころんじゃうぞ?
この間ころんだのを忘れたのか?

「ぁう!」

べしゃって音をさせて案の定ころんだ伊織に僕はゆっくり近づいた。
ころぶまえに助けるのが先輩として当然なんだろうけれど、僕はただの一度も助けたことはない。
例えこんな風に目の前でころんだとしても、だ。

「ほら、伊織。手」
「ぅー・・・ありがとうございます」
「どういたしまして」

ひょいっと軽い身体を引き起こす。
流石に一年生だけあってこの小さい身体はものすごく軽い。
片手だろうと簡単に持ち上がるだろう。

恥ずかしいのか下を向いたままこっちを見ない。
でも、今伊織がどんな顔をしているのか、僕にはわかる。
恥ずかしそうにはにかんで、頬を紅色に染めているだろう。

だって、耳が真っ赤だ。

「伊織、お茶にしようか」
「ぁ、はい!黒木先輩!」

繋いだままだった手を引いて、伊織を縁側に促す。
淵に座らせて、今日のお菓子を取り出して伊織に渡すと、ふにゃぁとあの笑顔。
ああ、まったく、この子は可愛いな。

伊織の顔は、どんな顔だって可愛く見える。
恥ずかしがってる顔や、少し涙目になってる顔。
それが見たいがために、僕が伊織を助けないと知ったら、伊織は僕を嫌いになるかもしれないな。


でも、安心してよ。
僕が一等好きな顔は、あのふにゃりとした笑顔だから。







ううん。しょうちゃん・・・。
 

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