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あそこだけ色がついて見えるんだ。
この世界はモノクロで、ずっと色がついて見えなくて。
でも伊織を見つけてからは、そこだけ色がついて見えて、そこから少しずつ色が広がって行って。
今では簡単に君を見つけられる。
今まであんなに時間をかけて君を探していたのに、今は探さなくとも君がどこにいるかなんて分かってしまう。
でも今は見たくない。
まだ、気持ちに整理がつかないんだ。
まだ君を見て自然な行動が取れない。
平気なフリなどできないんだ。
君の笑顔が今の俺には苦しいよ。
ねえ伊織。
あんなに会いたいと思っていたのになぁ。
今じゃ君を見つけるたびに顔をそらしてしまう。
素直に君を見ることが出来ない。
憎いとさえ、今では思う。
「鉢屋!」
「・・ああ、不破か」
雷蔵もこの大学にいた。
前世の時に俺が伊織の次に心を許していた相手。
きっと探せば先輩達も級友達も可愛い後輩達もきっとどこかにいるだろう。
でもきっと、この雷蔵のように前世を覚えている奴はいないに違いない。
伊織も雷蔵も持っていなかった記憶。
俺しか持っていなかった記憶。
なんでこうなった?
これなら記憶なんてない方が良かった。
君のことも何もかも忘れて新たな人生を歩みたかった。
ねぇ誰か、お願いだ。
助けてくれ。・・・助けれくれ。
もう泣けないんだ。
前世で伊織を失ったときに流した涙で、俺の涙は全部枯れてしまったんだ。
「・・・なんか気落ちしてるね。どうしたの?」
「なんでもないさ」
「・・・泣きたそうな顔してるね」
「そんなことねーよ!ほら、次の授業遅れるぞ!」
「・・そうだね」
止めてくれ。お願いだから。
助けてくれなんて嘘だ。
助けてなんて欲しくない。
止めてくれ、お願いだ。
枯れた涙が溢れてきそうで、止まらない。
今感情を出せば、もうダメなんだ。
止まらない。止められない。
嫌だ。お願い。
愛しいままで終わらせたいんだ。
そっとしておいてくれ。
頬に一筋零れたものに気付かぬフリで足を早めた。
続
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