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◆ 01

神様って、きっと俺のことが嫌いなんだ。
前世でもあんなことがあって、ああこんな死に方なのか、なんて思っていたのに。
生まれ変わらせてもらったときは、新しいチャンスをくれたんだと思った。
感謝もした。
でもさ、きっと神様は俺にチャンスをくれたんじゃない。
徹底的に俺を叩きのめすために、新しい生をくださったんだ。
失望させて、底の底まで落として、もう這いあがれない状態にして、そして捨てるんだ。
ぽいって。

ああ、神様なんて大嫌いだよ。
好きだったことなんて数えるくらいさ。

「早苗さーん!」

明るく幼い声が聞こえてくる。あれは二年生の声かな。
それに受け答えする声も明るい、でも幼くない女の人の声。
彼女は忍術学園にふさわしくない雰囲気を持って、そこにいる。
ちょうど一週間前に忍術学園に落ちてきた人。
明るくて優しくて甘くて落ち着く人。彼女に惚れない人間はいない。

だって、彼女は愛されるために、果ては俺を絶望に落とすためにここにおっことされた人なのだから。

俺は前世で死んで、それは酷い死に方だった、そしてこの世界で新しい生を受けた。
曰く、生まれ変わったってこと。
前世は平和な世界だった。少なくとも自分の周りは争いなんてない平和な場所だった。
だから乱世に生まれて、生まれ変わったことを少し後悔した。
でも、あんな酷い死に方で終わった人生だけで自分を終わらせるなんてしゃくだったから、俺はこの新しい人生を受け入れたんだ。
神に感謝まで捧げて。
それからは必死に生きたさ。
自分の出来るだけをその時その時でしてきた。
この新しい生はどのくらい長く続くかなんてわからない。だって前世はすごく短かった。
だから、一瞬一瞬を大切に生きたよ。
そして生き残りやすいようにと忍術学園に入学させて貰ったんだ。
戦う術を知っていた方が、この世界では生きやすい。その代償は決して小さいものではないけれど。
でも、大切な仲間を見つけた。友も見つけた。後輩も可愛いし、先輩も大切だ。先生もこの学園すら愛しい。
自分を構成する周りの人たち。すごくすごく大事なんだ。愛しいんだ。
俺も五年生になった。忍者のたまごとはいえ、いろいろなことを知った。
世界の裏っかわすら。
でも、それ以上に大切なものが多いから、これを大事に生きていこうと決意新たにしたというのに。

神と言うやつは、本当に本気で俺が嫌いみたいだ。

五年になって少し、一月くらいだろうか。
あの女が来た。落ちてきた。文字通り空から。
叫び声が響いて、みんなが騒々しくなって、校庭にいた六年生たちが空を見上げて。
女は六年生の集団の中に落ちてきた。
それからこの学園は変わった。
仲の良かった五年の仲間たち。俺によく話しかけてきた四年生の後輩たち。懐いてくれていた下級生たち。可愛がってくれていた六年生の先輩たち。
みんな、離れていった。みんなあの人に夢中だ。
俺もあの人の傍にいれば、まだみんなの中にいられるんだろう。
でも、俺はあの人に興味などなかったし、どうしても仲良くしたいと思わなかったから。

彼女はいい人だ。明るくて優しくて甘くて可愛い。美人ではないけれど、ほっと温かくなる人だ。
そう分かっているのに、俺はあの人を好きになれない。

だってあの人は俺を絶望に陥れる人なのだから。







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