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朝起きると隣に彼の穏やかな寝顔があって、私はそれを見るといつも心が温かくなる。
温かで穏やかで平和な日常が、毎日永遠に続くなんてそんなことはあり得ないのだと、事実を突き付けられたのは三年前だった。
雷蔵は三郎と一緒にある忍務についていて、とても忙しそうにしていた。
毎夜毎夜忙しそうにあちこちを駆け回り、朝方帰ってきては昼まで寝てまた出ていく。
私もくノたまだったから分かる。
忙しいことも、抜けられない忍務だということも、そして三郎と一緒に任務にあたれば、今まで組んだ誰よりも早く素晴らしい出来で任務遂行できることも。
それに、毎日私のもとに帰ってきてくれるのは、私を愛しているからだということも。
だけれど任務が始まってから一月くらい経った朝、雷蔵は帰ってこなかった。
次の日もその次の日も帰ってこなくて、なにかあったのだとすぐに分かった。
すぐに三郎に専用の連絡口で連絡を入れたけれど、三郎からの返答もなし。
二人になにかあった。
私に連絡できないほどのなにか。
ここへ帰ってこれないほどのなにか。
・・・死、かもしれない。
一度そう思うと、嫌な想像ばかりが膨らんで、止められなかった。
気が狂うかと思うほど泣いた。
毎夜毎夜泣いて、だけれどそれでも涙は枯れなくて。
雷蔵、雷蔵、雷蔵お願い。
帰ってきて・・・!
「ただいま、伊織」
彼が帰ってきたのは、雷蔵と最後に会った日から二十日ほど経った後だった。
続
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