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彼は多くの怪我を負っていて、だけれどしっかりとした足取りで私のもとに帰ってきた。
穏やかな温かい笑顔を私に向けて「遅くなってごめん・・・ただいま、伊織」と言った。
家の勝手口に立ったまま、彼はそこを動かなかった。
ただ私に穏やかな笑みを向けて、両手を広げて見せるものだから、私は居てもたってもいられなくなった。
彼に飛びつくようにして、私は彼の名を叫んだ。
「・・雷蔵!」
「っ伊織、ごめん・・・ごめんね。・・伊織」
「雷蔵、雷蔵、雷蔵、雷蔵!ぅああぁぁ・・・ふぅっぅ~・・・」
止まらない。
涙が止まらない。
ああ、ああ、帰ってきてくれた。
彼が帰ってきてくれたのだ。
彼が、雷蔵が雷蔵、雷蔵、彼が、雷蔵が帰ってきた!
彼は私をぎゅっと抱きしめて、自分の胸に私を押し込めた。
強く強く隙間ができないほどの抱擁で、彼の体温が私に移る。
温かさが私に彼が生きていることを教えてくれた。
この温かさが愛おしい。
再び訪れた幸せがたまらなく大切なものに思えて。
・・・きっともう、手放せない。
続
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