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春。桜。入学式。新学期。
新しい門出のこの季節、僕にも春が訪れたのだった。
あれは入学式が終わってから一月ほど経った頃だろうか。
食堂へ昼食を取りに行こうと廊下を歩いていた時だった。
ととととと、と足音を鳴らしながらこちらに向かって走ってくる音が聞こえたんだ。
足音をさせるのは忍者としては失格だ。
きっとまだ忍者としての自覚の足らない下級生達だろうと進行方向を見ていると、廊下の角から桃色が飛び出した。
小さな身体、ふわふわの癖っ毛な黒髪、やや大きめな黒い瞳、幼い顔立ち。
一年生のくノたまであるのは間違いなかった。
彼女は何を急いでいるのか、必死になって廊下を走っている。
僕は真横の壁を見た。
『あわてるこどもは ろーかでこける』の貼り紙。
「ひゃっ!」
可愛らしい声の後にどてっと痛い音が聞こえた。
慌てて前を見直すと先ほどまで走っていたくノたまは廊下にうつぶせに倒れていた。
ああ、しまった。助けてあげるべきだったか。
泣きだすだろうな、と思いながらそろーっと近付く。
泣かれてもうまく慰めることはできるだろうが、くノたまとして一月過ごした彼女が素直に僕の言葉を聞いてくれるかは、流石の僕でも分からないな、なんて思っていた。
思いながら、「しょうちゃん、相変わらず冷静ねっ」なんて級友の声が聞こえた気がした。
大丈夫か?
声をかけようとして慌てて口を閉じた。
くノたまの子が、がばっと音を立てる勢いで起き上がったからだ。
キョロキョロと周りに視線を這わしている。
そして、僕に気がついた。
「っ!」
大きな目をめいっぱい見開いて、それから徐々に頬が赤くなって、そして、そして・・・
ふにゃぁってはにかんで。
僕はこの時やっと、ああ、春が来た、と自覚した。
続
どうだろうこれ^^
しょうちゃん、あいかーらず冷静ねっ!
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