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伊織が私の後をついて回ることは、もう私にとっては日常であったから、あの時もそう反対することはないのだと、簡単に考えていたんだ。
私が忍術学園に入学すると言ったとき、伊織は大層泣きわめいて母と父を慌てさせた。
普段あまり慌てることのない父が慌てふためく様は、当時の私にはとても面白く映って、あとで伊織と一緒に笑い転げた記憶がある。
忍術学園での日々は充実したもので、最初こそ慣れなかった私だけれど、大切な親友を見つけて、大事な仲間を見つけて、以前よりさらに充実した日々を送っていた。
伊織が傍にいなくても寂しいと思わないくらい、それはそれは楽しかったんだ。
伊織以外の年の近い子供と遊ぶなんて、今までの自分だったらありえないことだったから、初めての友達に舞い上がっていたのだろう。
大切な妹からの、つたない字の手紙を見ても、当たり障りのない返事しか書けないほどに、あの時の私は伊織を邪魔者扱いしていたと思う。
私の新しい世界を壊してほしくなくて、せっかくの友達なのに伊織のことを思い出したらまた全てが以前に戻ってしまうのではなんて考えて。
伊織をないがしろにしていた。
それを私はすぐに実感して後悔することになる。
長期休暇に実家に帰った。
久しぶりに伊織に会える。
現金な私は、親友たちに長いこと会えない寂しさを伊織で紛らわそうと思っていたのだ。
なんと勝手な言い分。
それでも幼かった私は、それでいいのだと思っていたのだ。
「ただいま」
告げて、返ってくるのは妹の可愛い声だと信じて疑わなかった。
それでも返ってきたのは父と母の「お帰り」だけで、伊織は私と一言も話さず、自分の部屋へ逃げて行った。
その瞬間の私の心臓への衝撃と言ったら、言葉では言い表せないほどのもので、父と母を問いただして、そして知った。
最初に伊織をないがしろにしたのは自分だったと。
突然懐いていた私がいなくなって、それをうまいこと理解できずに私に会いたいと文を出しても、的外れな言葉が並んだ文が返ってくるだけ。
伊織はどれほどに絶望しただろうか。
私がみんなと楽しくしている間、あの子は何をしていたのだろう。
私は私がいなくなってからのあの子を何ひとつ知らない。
自分の都合のいい言い訳を並べて、あまりうまく理解できない伊織と仲直りをして、今度こそは伊織をないがしろにしないと自分に誓いを立てて、今まで以上に伊織を愛して甘やかして懐かせた。
結果がこれだ。
伊織は私の後を追い、忍術学園に入学して、そして死んだ。
私が殺してしまったようなものだ。
それでも、あの時のあの子の顔が忘れられない。
最後に見せた、あの笑みが忘れられない。
続
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