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意識が競り上がっていく。
小さな自分のうめき声が聞こえて、その音で目を覚ました。
すうっと頭が冴える感覚。
まだまどろんでいたいのに、こう言う時は目覚めのいい自分に嫌気がさす。
隣にはすでにいない存在へ思いを馳せる。
彼はやはり今日も帰ってしまった後のようだ。
別にそのことについてはもう今更であるから気にはしていない。
特に怒りも湧いてはこない。
ただ、どうしようもないほどの虚無感が私を襲う。
留三郎はいつも私が目覚める前、いや私が眠りについた瞬間かもしれない。
とにかく、私が寝ている間に帰って行ってしまう。
一度だって私の隣で一夜を越えることがなかった。
冷たくなったシーツに指を這わして、昨夜のことを思い出す。
熱を孕んだ空気。
互いの吐息。
絡み合う手足。
汗で湿った肌。
身体の中に感じる、もどかしいほどの熱。
全て思い出せる。
夢ではなかったと私に告げている。
私と留三郎は大学で知り合った。
同じ学年で同じ学部、しかもサークルまで同じな私たちが仲良くなるのに、そう時間はかからなかった。
興味のあることや趣味も似通っていて、休日も一緒に遊ぶようになるのもすぐのことだった。
隣には留三郎がいて、その彼の伝手で他学部にも何人か友を作ったが、それでも彼が一番の友だった。
他の女友達を差し置いての一番だったから、きっと私にとって彼は、友達以上恋人未満といった感覚だったのだろう。
一緒にいて楽しかった。
隣にいたい、傍にいたいと思った。
ただ、一緒にいたかった。
楽しかったから。
その関係が崩れてしまったのは、大学二年の終わりだった。
その日、何やら落ち込んだ雰囲気の留三郎がいて、その珍しい姿に忘年会だと託けて食事に誘ったのだ。
悩みがあるのなら相談に乗りたかった。
頼ってほしかった。
だって友達ではないか。
最初は渋っていた留三郎も、酒が回り出したのかはたまた私の言葉に絆されたのかは分からないが、少しずつ語り出した。
好きな人がいたのだ、と。
決死の思いで告白をして振られてしまったのだ、と。
その言葉を聞いた時、私にどれほどの衝撃が走ったのか彼は知らないだろう。
知るはずもない。
死んでしまいたかった。
続
突発、留三郎のターン!
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