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「好きです!俺と付き合ってください!!」
ばっと勢い良く下げられた頭と、目の前に突き出されたまるで握手を求めるかのような手に、何年前の恋愛番組だと思わず突っ込みを入れそうになったのは仕方のないことじゃないかと思う。
時は放課後。
ここは呼び出しの定番と言ったら定番の裏庭。
今朝私の下駄箱の中には爽やかな水色の手紙が一つ、ちょこんと存在を主張していた。
手紙を止める役目はハートのシール。
これは、何ともいい難いくらいに定番の恋文。つまりラブレターだ。
いまどきこんな定番すぎることをする男の子がいるなんて、と軽く衝撃を受けたのは言うまでもない。
で、手紙に書かれた内容は言わずとも知れた呼び出しで、放課後に裏庭で待ってると言う事。
差出人は書いてないけれど、これは行かねば可哀想・・・というか失礼だからと、帰りのホームルームが終わって裏庭に向かった。
私みたいなやつにラブレターを渡そうとする相手の顔も見てみたかったし。
少し薄暗くてあまり人の寄り付かない裏庭には、一人の男子生徒。
そして私はその人を見てさらに軽く衝撃を受けた。
くくく、久々知君だと!?
この学園で、しかも私たちの学年で久々知君を知らぬ人はいないだろう。
彼は顔よし頭よし性格よしの三拍子がそろった、いわくモテ男だ。
彼の周りにいる友達もモテ男だが、その中でも彼と鉢屋君は抜きんでて人気がある。
女の子の話題に一日に一回は登場する人物たちだ。
それがいまどきラブレターだと!?
まさかの攻撃にその場に立ち尽くしていると、久々知君は私の方を振り向いた。
瞬間浮かぶ綺麗すぎる笑み。
頬を染めて笑うなバカヤロー!今お前の周りに花が舞ったぞ!
へたすりゃそこら辺の女の子よりも可愛いのに笑うとさらに可愛いってどういう了見だてめぇ!
思わず口も悪くなるってものだ。ちくしょう。
動かない私に、たたたっと小走りに近寄ってきた久々知君は、定番通りいきなりの呼び出しに謝罪を述べ、更には私が来たことに感謝を述べ、そして冒頭のセリフと相成るのです。
「ごめん」
「えっ!?」
回想が終わった瞬間に私が言った言葉は一言の謝罪。
つまりはお付き合いできませんってことで。
久々知君は下げた時より更に勢いをつけて顔を上げた。
悲しそうに顔を歪められても、ごめんはごめんだ。
私の意見は変わらないよ。
「私、久々知君とは付き合えない」
「・・・な、なんで?」
「だって私、大豆アレルギーだもの」
ぽかん、形容するならそんな音だろう、顔を浮かべる久々知君。
そう、何を隠そう私は大豆アレルギー持ちだったのです。
そして彼、久々知兵助君は自他ともに認める、豆腐好きなのだ!
彼の豆腐好きは、この学園に入ったら誰もが知るであろうくらいに有名である。
久々知兵助を知らぬ人も、久々知兵助は豆腐好き、ということは知っている。
ううん、まるで枕詞か何かのようだ。
そんな豆腐好きの彼と大豆アレルギーの私。
本来ならば断るか断らないかは置いておいて、友達になりたいものだ。
だけれど、それも簡単にはできない。
何故って?それはね。
彼は毎食豆腐を食べているからです。
学校の食堂では彼専用に「豆腐」という食券があるくらいだ。
いやはやその素晴らしき豆腐愛には感服するばかりである。
「じゃ、じゃあ学校では豆腐食べない!」
「でも朝と夜には食べるんでしょう?」
「じゃ、じゃあ朝も食べない!夜だけにする!」
「うーん、でも毎日食べてるのよね?」
「じゃあ!・・・じゃあ毎日から四日に減らす」
苦渋の選択と言わんばかりの歪んだ顔で、それでも言い募ってくる久々知君。
なぜそこまでして私と付き合おうと思うのか。
あなたの愛する豆腐が食べられない女だよ?
むしろ原材料の大豆から食べられない女なんだよ?
それなのに、愛する豆腐を毎日食べることを諦めてまで私と付き合いたいと言うの?
「・・・だめ、かな?」
「・・・」
「・・・俺とは付き合えない?どうしてもだめ?」
「・・・・・・・どうしてもってわけじゃ、ないけど」
「じゃ、じゃあ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・よ、よろしく?」
「やった―――――!!!大好きだ!豆腐よりも愛してるっ!!!」
そのセリフはどうかと思うよ久々知君。
私は私たちの今後が深く、それはもう深く心配になったのでした。
完
これ三郎視点とか書いてみたい^^
けっこう楽しかった。
キスシーンとか、今後の展開も書けたら書こうかな。
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