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分かっていたのだ、この行為がいけないことだということも、自分のせいで彼女が苦しんでいるということも。
自分が彼女をいつの間にか好きになってしまっていたということも。
だけど、もう今更止められない。
手放すことなどできなくなってしまっていた。
荒い呼吸を何とか正して、深く息を吐き出した。
湿った空気に孕んだ熱は、まだ新しいまま部屋の中に充満している。
自分の精の匂いが鼻について煩わしく感じる。
留三郎は眉間に皺を寄せて、視線を下に落とした。
目の前には愛しい女。
長い髪を振り乱してベッドにぐたりと倒れこんだまま、意識を失ってしまっている。
いつもこうだ。
いつも大事にしたいと思うのに、大切に慈しみたいと思うのに、自分の欲が邪魔をして結局は好き勝手してしまうのだ。
伊織を組み敷いて身体の隅々まで愛して、好き勝手突き上げては精を放つ。
どれだけ伊織の負担になっているのか、男の俺には正確なものは分からない。
だけれど少なくとも、意識を失うほどに身体に影響を及ぼしているのだと思うと申し訳ないと思ってしまう。
わかっているが伊織が愛しくて、この行為を止められない。
ずっと自分の腕の中にいてほしくて、どうしても手放してやれない。
いけないことだとちゃんとわかっているのに。
伊織のことを想うのならば手放しれやれと、解放してやれと伊作にも仙蔵にも、文次郎にさえ言われた。
だけれど、嫌なのだ。
伊織を手放すなど、俺ができるはずもない。
嘘をついてまで手に入れたかった人。
嘘をついたら手に入ってしまった愛しい女。
わかっていた、それがいけないことなのだと。
わかっていても、どうしようもなかったのだ。
疲れたように、留三郎はベッドから降りて帰り支度をする。
伊織が寝ている間にいなくなるのは、罪悪感から逃れたいという留三郎の自己保身だ。
目の前で泣かれて恨み事を言われたら。
そんなことを考えるだけでも死んでしまいたくなる。
手放したくないのに、手放さざるを得なくなる。
だから逃げるように伊織の前から去るのだ。
本当はこのまま抱きしめて、朝一番に伊織の声を聞いて。
幸せに浸ってしまいたい。
だけれどそれは、できないと分かっている。
嘘をついたから。
好きな人がいるということは嘘じゃない。
伊織が好きだ。
好きな人に振られたということもあながち嘘じゃない。
だって伊織にはずっと、好きな人がいただろう?
だけど告白したというのは嘘。
まぎれもない嘘だ。
俺は告白すらできず、伊織の優しさに漬け込んだ、ただの愚かな男だ。
すっかり身支度を終えて、名残惜しげに伊織を見つめる。
その瞳は熱を孕んで、だけれどもそのまま部屋から去った。
ごめんな、伊織。
愛しているよ。
完
もしかしたらまた続くかも?
とりあえず両片思いwww
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