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「留さんはバカだ」
眉間に皺をこれでもか、と寄せた伊作は事実を告げた俺にそう言った。
その瞳には怒りなど見えず、ただただ悲しみだけが宿っている。
伊作は俺の気持ちを知っていた。
そして俺がとった行動も今全て話して知っている。
俺が伊織に嘘をついて、騙して、手に入れたこと。
それを知った伊作は酷く悲しげに顔を歪ませて、一言なんで?と俺に告げた。
なんでなんだろうな、伊作。
俺、ただあいつのこと好きになっちまっただけだったのにな。
だけどあいつには好きな人がいたんだ。
俺、駄目な男だからさ。
好きなやつを他の男になんてやりたくなかったんだよ。
俺の腕の中に閉じ込めてしまいたかったんだよ。
俺の隣にいてほしいって願っちまったんだ。
あいつが、伊織がいないと駄目だったんだ。
笑って言ったつもりだったけど、酷い顔をしていたらしい。
伊作は泣きそうになりながら、バカだよって。
そうなんだ、俺バカなんだよ。って返したら、もう一度バカって言われちまった。
伊織、伊織伊織伊織伊織伊織。
どうすればよかった?
俺、どんな行動をとればよかった?
伊織の恋の応援をすればよかったのか?
伊織が幸せならそれでいいって、友達として隣にいられればそれでいいって、笑って身を引けばよかったのか?
お前の隣に俺の知らない男が立って、お前と笑いあってんのを傍で見ていればよかったって?
そんなことできるわけねーだろ!
想像しただけで腸が煮えくりかえりそうだってのに!
下っ腹に黒く淀んだ、ドロドロした感情が溜まって、身動きが取れなくなりそうで。
それでも、お前が愛しいのだと、言う俺は心底駄目な男だ。
お前の幸せを第一に考えられない俺は、お前の傍にいない方がいいんだろうな。
そこまで考えて、だけど全てを否定するように、俺は今日もお前の隣に並ぶのだ。
謝罪なら、腹の中でいくらでも。
続
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